(ピーター・クニッベ氏)
今年、日本外務省は第二次大戦中の旧オランダ領東インド(インドネシア)におけるオランダ人犠牲者18名を日蘭平和交換プログラムの一環として日本へ招待しました。このプログラムの目的は、オランダ人犠牲者たちが戦時中の体験と向き合い、それを乗り越えるためのサポートをすること、日本や日本人と共に和解の精神を促すことです。そして更には、オランダと日本の平和と友好が促進されることを目的としています。
日本滞在中の10日間、参加者たちは水巻、長崎、大阪そして東京を含む各都市を訪問しました。水巻では、日本で亡くなった871名のオランダ人捕虜兵を記念して建てられた「十字架の塔」、また、長崎の平和記念公園(および長崎原爆資料館)を訪れると共に、大戦中多くの捕虜が収容されていた香焼の記念碑を訪問しました。史跡や地元の学校の訪問も滞在中に行われました。また、参加者たちは中央大学の日本人大学生と共に講演やディスカッション、そして対話の会が主催をした東京の在日本オランダ大使館での会合に参加しました。
交換プログラムは1996年村山総理大臣の下で始まって以来毎行われており、その間総勢で500名以上の参加者を迎えました。私たちは、この交換プログラムが今後も日本外務省によって続けられることを願っています。
11月16日、「対話の会インジャパン」が東京の在日本オランダ大使館で開かれました。
これらの写真は、在日本オランダ大使館で11月に行われた第16回「対話の会インジャパン」の際に撮影されました。
会合の後の夜、日本外務省によるお別れセレモニーにて。
私たちは、日本政府がこの日本滞在を可能にしてくれたことに感謝しています。
私たちのグループの18名の巡礼者は、丁寧なレセプションと優雅なもてなしを受け、非の打ち所のない宿泊施設は私たちをくつろがせてくれました。
全ては、私たちの忘れがたいホストと通訳、アヤコとマヤの案内のおかげです。彼女たちの配慮と温かさは、私たちをまるでひとつの大家族ように感じさせてくれました。
以下は、大戦で両親を亡くしたピーター・クニッべ氏によるセレモニー閉幕のスピーチです。
2016年11月16日「対話の会インジャパン」東京在日本オランダ大使館にて、ピーター・クニッべ氏によるスピーチ
あなた方日本人は、私たちを歓迎するため何をすればよいか勿論ご存知でしょう!
最初、水巻の吉田小学校の児童たちが熱心に旗を振りながら迎えてくれたことに、私たちの心はすっかり奪われてしまいました。
ユウタ君という児童が私の手をとって、一緒に学校の踊り場を通りミーティング室まで歩いてくれた時、涙が出る思いでした。
学校の校長や先生方の心温かさにとても感動しました。
私たちは、午前中の全ての時間を子供たちと一緒に過ごしました。
子供たちは、私たちをゲームや踊りで楽しませてくれたり、書道を教えてくれたりしました。そして一緒に昼食を食べました。
子供たちの目は、子供時代の幸せで輝いていました。また、私たちは子供たちの熱心さや、いたずら心、そして子供たちの信頼を見たり、感じたりしました。
私たちは子供たちと一体感を感じました。
そして私たちがかつて子供だった、75年前の私たち自身を見出しました・・・
けれど、私たちはそんな風に子供でいることは許されませんでした。
私たちの子供の世界は、突然終わりを告げました。
私たちの人生への欲望は奪われました。
私たちは、信頼することの代わりに恐れることを学びました。
学ぶ機会を与えられませんでした。
私たちの中には、母を、もしくは両親を亡くしたものがいます。
私たちの中の一人は、母親が目の前でレイプされるのを見ました。
私たち全員は、母親が熱烈な太陽の下で屈辱的に何時間も立たされ、長い剣で残酷な男に殴られるのを見ました。
私たちは空腹で、恐ろしく、憎むことを学びました。
私たちは、お腹の膨らんだ骸骨のようになりました。
そして、何年もの残酷で恐ろしい恐怖の後、脅威は止み、生命が再び呼び起こされました。
けれど、恐怖や憎しみ、毒などが心の底深くに堆積し、残っていました。
それは永久的と言える毒です。
70年以上もの間、私たちはこの重荷を負ってきました。
時にはその重荷と戦い、その夢にうなされながら。
そしてこの重荷を軽くしようと、この腫瘍を取り出そうとしてきました・・・
日蘭平和交換プログラムで過ごしたこの一週間、日本政府の慈悲深い寛大さは大きな手助けとなったことを感じました。
水巻の「十字架の塔」での献花式、
カリスマ的な代表、黒河氏と出会った「平和と文化を育む会」主催の歓迎レセプション。
その次の日の、美しい日本庭園に囲まれた芦屋釜の里のお茶会では、尊敬と賞賛に値する日本の姿を見せられました。
長崎の平和記念公園と長崎原爆資料館を訪れた日は、私たちの滞在中で一番心に残る日となりました。
もうひとつのハイライトは、中央大学の学生と参加した講演やディスカッションでした。
私たちは新しい日本の強さと約束、現在の日本の姿をみました。
それは、私たちの過去の悪夢とはまったく異なるものでした。
私たちはこの機会を掴んで、ここから前へ進んでいきたいと思います。
日本とオランダという2つの国民が共有する歴史と文化を築いていきましょう。
オランダの豊かな文化遺産とそれに多くのつながりをもつ日本の象徴として、私たちの国の首都、アムステルダムの国立美術館の宝物のひとつである丁寧に包まれたこの美しい本を贈呈いたします。
ここでスピーチがダウンロードできます。